海、飛ぶ

犬飼は知りませんでした。

ワンコは心の底から驚くと『飛ぶ』ということを。

例えシニア期のワンコだとしても。

そうです。

海が飛びました。

海が床の上でへそ天で寝ていました。

それに気づかず、犬飼は布団を投げる。

結果、海が飛び上がる。

マンガの世界にあるような飛び方。

いやあ、犬ってこんな驚き方もするんだあ。

そう思いました。

当然、全力で謝りました。

全身全霊の土下座です。

ジャパニーズ土下座という奴ですね。

でもなかなか海が許してくれません。

そこで頼ったのが、骨ガム。

海は骨ガムが大好きなのです。

『骨ガム？』の単語ですっ飛んできた海に、骨ガムを与える。

途端にご機嫌になる海。

うん、単純だねえ。

海のご機嫌取りには骨ガムが有効。

歯が大分減ったのに、骨ガムの食い意地は頑張ります。

ちゃんと柔らかいタイプを選んでいるのですが、歯茎で骨ガムを引きちぎった海を見て驚きました。

まだまだ長生きするな。

そう思いましした。

もともと海は、骨ガムに執着しています。

大型犬用の骨ガムさえ、血だらけになりながら食らいついた前科があります。

あの時は焦りました。

血まみれの骨ガムを加えて、唸っている海。

油断した犬飼が悪いのですが……。

あの時は海も犬飼も若かった。

ぶつかり合って、傷つけあっていました。

今はお互い角が取れましたね。

海はツンデレからデレデレに昇格。

そらはデレデレからデレデレデレに昇格。

歳を取るって素敵ですね。

生き物は年を取ると丸みを帯びると思います。

柔らかい態度になりますね。

少なくとも海はそうです。

最初はツンデレすぎて、対応に困りました。

でも今なら、海のことが理解できる。

不思議ですよね。

この調子で寅吉もデレにならないかなあ。

あの子は本当にツンツン。

『心を許す』という言葉を知りません。

それでも手乗りハムになっただけありがたい。

感動ものですね。

ツンハム最高。

犬飼にいる生き物は初心者に優しいです。

まるで犬飼の至らない部分を補うかのよう。

特に海は、最初から犬飼を教育しました。

ワンちゃんが『絶対にダメなルール』を教えてくれました。

そらは『無条件に愛する』ことを教えてくれました。

犬飼の心を育ててくれたワンコです。

これからも支えていきたいと思います。

だから長生きして欲しいですね。