我が家のアイドル、海との出会い。
海との出会いは忘れもしない、ある年の12月24日。
前飼い主が『犬の誕生日ケーキを代わりにあげて欲しい』という願いを叶えるため。
その頃から、海は捨てられる兆候はあったのかも知れない。
友達とは言え、愛犬の誕生日ケーキを託すか?とも思った。
でも私はそんなものなのかも知れないと思って、友人から家の鍵を借りる。
ドアノブを回せば、わんわんと泣き叫ぶ犬の声。
そこには…
天使が居た。
いや、もう一目惚れ?
威嚇している海が可愛いのなんのって。
小さい顔につぶらな瞳。
ガリガリな体に違和感を覚えたが、それでも冷蔵庫にあるというケーキを取り出す。
すると今まで鳴いていた海が、吠えるのを止めた。
まるで貰えるのを知っているかのように。
「食べる?」
…と訊けば、尻尾を千切れんばかりに振って来る。
やっぱり天使だ。
そう思ったのは言うまでも無い。
とりあえず餌皿にケーキを移す。
それを黙ってお座りで待つ海。
プレートに『海ちゃんお誕生日おめでとう』を見て、ようやく海という名前を知る。
前飼い主は名前すら教えてくれていなかったな、と、ぼんやり思いながら、海にケーキを差し出す。
海は物凄い勢いでケーキをがっつく。
まるで今日初めてのご飯だと言わんばかりに。
後日談たが、本当にこの日最初のご飯だったらしい。
ケーキをひとしきり食べ終えた海は、そのまま離れるのかと思ったら、甘えて来た。
この時点でノックダウンした私だが、前飼い主に譲ってくれとは言えず。
そもそもこの時点で住んでいた家はペット禁止。
海を無理やり引き取っても悲しい思いをするのは、海だと十分に分かっている。
だから私はこの天使を撫でまくって愛でる。
ひとしりき愛でまくった後、時間が来たので立ち去る事にした。
けれども海がまとわりついて、離れない。
-この天使は私をキュン死させる気か?
後ろ髪を引かれる思いで、家を出たのは言うまでもない。
それからしばらく経過して。
前飼い主が、海を保健所に連れて行くと言い出した。
実家に帰るのに、海が邪魔だという。
簡単に命を捨てる考えに腹が立った。
そして自分の人生を賭けて、海を育てていこうと思った。
前飼い主から、譲渡してから行動は早かった。
ペット可の物件に移り住んで、海との正式同居を確保。
ペット用品を貯金を切り崩して買い揃え、ペットフードも厳選した。
海はトイレ以外の躾を受けていなかった。
だからまず伏せを覚えさせ、マテの訓練をした。
海は元々賢い子だったのだろう。
伏せもマテもすぐにマスター。
ただおもちゃで遊ぶという概念が無いらしく、とにかく私に甘えるという行動を起こす。
もしかすると愛情不足なのかも知れないと思い、出来るだけ時間を海に割いた。
不満は無い。
むしろこんな天使が我が家にやって来たのだ。
文句などある訳が無い。
こうして海と私の共同生活が幕を開けたのだった。
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