そらとはペットショップで出会った。
海と過ごしてから2年が経過した時だった。
別に新しい犬を迎えるつもりは無かった。
友人が初めての犬を迎えたいと言うので、付き合っているだけ。
元々その友人は海の可愛さにやられていたので、飼うならダックスが良いと言っていた。
そのため問い合わせをし、生後1年のダックスがいるという店にやって来たのだ。
その子はゲージの中で震えていた。
一体、どんな扱いを受けてきたのか?
そう思いたくなる位、怯えていた。
それが『そら』との出会い。
店員はやたらとそらをプッシュする。
もうお散歩出来ますよ、とか、躾はバッチリです、とか。
とりあえず抱っこしようかという事になり、そらを抱き上げる。
するとそらが怯えてオシッコを漏らした。
どう考えても尋常な飼育環境じゃない。
友人はオシッコをひっかけられて、飼う気を無くしたようだ。
私に『抱っこする?』と言って来る。
もちろんYES。
抱っこすると、大きな目を潤ませて、震えている。
一生懸命訴えかけるその瞳は、今、手放すとこの子は殺される気がした。
幸い今の家は、2匹の多頭飼いはOK。
私は多頭飼いのリスクを計算した。
海は1匹で生きている事に慣れている。
今更相棒が出来たら、逆にストレスにならないか?
悩んだ。
凄く悩んだ。
でもこの震えている命を見捨てる程、私も非情になれない。
私が訊ねた。
「もし、この子を飼わなかったらどうなりますか?」
店員。
「もう大きいですからね…」
それが決定打だった。
海は説得しよう。
今はこの子を連れ帰るのが先決だ。
こうして『そら』は我が家の一員になった。
ちなみに余談だが、私がそらを連れて帰った時。
海は『ふーん』と言った表情で迎えてくれた。
そらは怯えて海に噛みついたのだが、そこは年長者の海。
返り討ちにして『私がボス』という躾をしてくれた。
さすが海様。
それから2匹は寄り添うようにして、生きている。
私の判断は間違っていなかったようだ。
コメント