海、『無』を爆誕

ペット 犬

うちにはミニチュアダックスが二頭いる。
海(うみ)と、そら。

同じ家で育ち、同じごはんを食べているのに、バナナだけは反応が真逆だ。

小さく切ったバナナを差し出す。

まずは海。

匂いを嗅ぐ。
一瞬迷う。
そして一応、口に入れる。

ここまではいい。

問題はそのあとだ。

噛まない。
飲み込まない。
ただ静かに、目の光がすっと消える。

「……なんか違う」

顔が完全にそう言っている。

怒らない。
拒否もしない。
ただ、無。

そして数秒の沈黙のあと。

ポロッ。

何事もなかったかのように、口からバナナが落ちる。

落ちたそれを見つめるでもなく、
「あ、これ要らないんで」とでも言うように視線を外す。

その一連の流れがあまりに自然で、毎回笑ってしまう。

一方のそらは違う。

バナナを見た瞬間からしっぽ全開。
目はキラキラ。
口に入れたら即・咀嚼。即・完食。

「おいしい!」が全身からあふれている。

同じ家で、同じように暮らしているのに、ここまで好みが違う。

甘いものはみんな好き、というわけじゃない。
食べられるものは全部歓迎、でもない。

犬にもちゃんと“なんか違う”がある。

海のポロッは、拒絶というより静かな意思表示だ。
「これは私の好みではありません」と。

そらの歓喜もまた、はっきりした意思表示だ。
「これは最高です」と。

同じじゃなくていい。

今日も私は、魂が抜けてからポロッと落とす海と、
歓喜して完食するそらを見比べながら、バナナを小さく切る。

そしてきっと明日も、海は静かに落とすのだろう。

ポロッ、と。

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